「性差の日本史」展
日本の性差(ジェンダー)はいつ誕生したのか。そもそも、性差とはなにか。歴史的資料をもとに、じっくり勉強できる企画展示。
日本の歴史を太古から紐解き、社会的役割としての男性・女性が、日本にいつ頃から誕生したのか、簡単に学習できます。
- 性差(ジェンダー)の日本史
- 2020年10月6日〜12月6日
- 場所:国立歴史民族博物館 千葉県佐倉市(佐倉城址公園)
僕なりにまとめます。大前提として、日本は性差に、かなり寛容な社会であったこと。まつりごとに女性が参加しない、というルールは、そもそもなかった。女性が記号(性差:ジェンダー)として歴史に登場するのは、平安時代頃。戸籍制度の確立に由来するそうです。しかし、家系を重んじる日本社会は、政治の頂点に、女性が立つ事がありました。例えば北条政子。女性君主の登場に社会的な偏見はなかったそうです。
江戸時代に入り、女性の役割は裏方にまわる。もちろん、政治的な発言は許されました。例えば大奥の女性など。そもそも、女性の発言を抑制する、という考えかた自体がないようです。江戸時代に仕事の階級制度が確立します。例外として、女性は職人になれなかったようです。
江戸時代に大店(おおだな)が登場します。江戸時代の大店は、300名前後の男性従業員で構成されていました。女性はいません。ここに登場するのが、性の管理。自慰禁止の社訓があったりします。大店の構成に重要な役割となるのが、性の管理=「遊郭」です。遊郭とは売春宿のこと。経営者は遊郭と上手に関係性を築くことが、必須スキルだったと。なお、遊郭は女性のみで構成される組織。女性経営者としての社会的地位は、相当高かったようです。もちろん、職業差別はありません。このあたりは、ヨーロッパと全然違う。ちなみに、大店の登場に、日本の終身雇用制度のルーツを感じました。これが、元祖サラリーマンでしょうか。
遊郭で働く女性が差別されるようになったのは、明治時代。文明開化で日本全体が西洋文明に右にならえした結果、「奴隷解放」とほぼ同義の意味で、遊郭が強制解体されたようです。しかし、遊郭を除籍された女性は、すぐ転職できるわけもなく、結局、売春業に戻ることもあったと。その際、今までは両親の都合で遊郭で働いていたが、解放後は「好きで売春している」と社会的偏見を受け、遊女に対する差別が始まったと。なお、明治政府が誕生した際、女性に参政権は与えられません。もちろん、選挙権もない。
日本社会を分断しかねない「性差」ですが、その誕生を見ると、近代が重要な要素となっています。男女差別は、日本が西洋化した結果の、負の副産物なのでしょうか。
