転倒による介護の重度化が課題

救急搬送の原因は転倒が8割

ふらつき歩行による転倒で骨折。高齢者介護の現場では、よく聞く話です。

介護の現場でもあるあるですが、なんと、救急搬送の原因は転倒が全体の8割であると。転倒・骨折による救急搬送です。現在は高齢であっても、病院は手術をしてくれます。例外もありますが、高齢者の骨折は病院で治る病となりました。

介護でもっとも困難なことは、高齢者が何らかの原因で入院した結果、退院後、今までの生活ができなくなる事です。

今までの生活ができなくなることに、本人は無自覚です。それは仕方のない事ですが、誰が高齢者の「できない部分」をフォローするのか。この「できない部分」を、退院前に話し合うことが求められます。

よくある話ですが、今まで1人で出来た排泄が、退院後は困難と予測される場合、病院は「オムツを着用して下さい」程度の説明しかしません。結果、オムツ交換は「家族」が担当するから大丈夫となります。

そして、自宅に戻って家族が体験するのは、失禁に振り回される介護地獄です。オムツを何回交換しても、排泄のタイミングが合わない。お漏らしを繰り返してしまう。そもそも、1日何回、オムツを交換すれば良いのか、判らない。排泄は尿を想定していたが、便の処理も必要だった。紙おむつは尿の問題を解決するツールであり、便の処理は苦手だと、知らなかった。さらに、尿を吸った寝具は容易に乾かない。交換もできない。仕方ないから、そのまま使ってしまう。あっというまに、部屋に異臭が立ち込める。気がついたら、異様な風景になっている。これは、まるで地獄だ。

こういった悩みは、よくある話なんです。最近では、退院後に必要なことを、病院も家族に詳しく説明するようになりました。しかし、具体的な介護をイメージできない家族に、突然、「来週、退院です」と迫る傾向は、いまも変わらないようです。

ひとりでトイレに行けない高齢者は、買い物に行けません。食事の用意もできない。ひとりで着替えることも出来ないし、入浴もできない。部屋の掃除もできないから、洗濯もできない。結果、きわめて不潔な環境に拘束されてしまう。

そもそも、高齢者介護の三大問題である「食事」「入浴」「排泄」を、家族が全て担わないといけないのか。家族がどれだけ犠牲を払えば良いのか。介護の担い手が高齢夫婦の場合は、どうすれば良いのか。独居だったら…

話の風呂敷を広げる前に、高齢者介護の問題点は、困難と思われる課題に「対応」はできるが、「解決」は難しい傾向にあります。「解決」とは退院前の状況に、可能な限り戻ること。それが困難なので、高齢者の生活を継続的に支えるため、介護サービスが必要なのです。

介護保険では、高齢者の自立した生活を支えることを、第一の理念としています。自立が困難な状況では、日常生活に障害となる機能、できない部分を公的保険で補いながら、高齢者の生活を支えます。

転倒骨折を例にすると、退院後は体が動かないから、寝たきりの生活になります。介護スタッフが、1日複数回訪問して高齢者の介護、まずは生活を支えます。オムツ交換や食事の提供。入浴や掃除洗濯など。できない見込みで介護を始めるケースが多いのが現状です。入院中の身体機能低下を考えると、当然かもしれません。つまり、退院後の介護サービスは過剰傾向にあります。しかし、自宅に戻る事で、徐々に身体の機能が回復してきます。そこで、回復の兆候を見極めながら、無理のない範囲で、まずはベット脇に置いたポータブルトイレを使い、排泄の援助を試してみる。

ベット脇に設置したトイレまでの、ちょっとした移動。かんたんな日常生活動作を繰り返すことで、効果的な訓練になります。ポータブルトレの排泄をクリアしたら、今度は自宅のトイレを使い排泄の訓練をしてみる。しばらくすると、トイレまでの移動手段は、車椅子から自立の歩行に変化してきた。ついに、ひとりでトイレに行けるようになった。

この状態が「解決」かも知れません。介護サービスでは、解決したい問題点を「目標」として、短期と長期で分類、ケアプランに記載します。短期目標の期間は3ヶ月です。つまり、退院後は最低3ヶ月後の生活目標に標準を合わせ、介護サービスを計画する必要があります。この一連の流れが、介護保険を利用した介護サービスとなります。

もし、高齢の家族が自宅で転倒・骨折したら、程度の差はあれ、このような手順を一様に経験することになります。

病院の入院を契機に介護サービスが重度化するケースが多いのですが、予防措置を講じることも可能です。普通の状態と介護が必要な状態、その中間状態のことを、近年「フレイル」というようになりました。このフレイルを遠ざけることで、介護の重度化を予防できると考えられています。

フレイル予防に必要なことは、次の3つです。

「よく食べる」「よく動く」「よく笑う」。つまり「食事」「運動」「社会参加」となります。

ご参考までに。

産経新聞朝刊 2019年11月29日
産経新聞朝刊 2018年11月30日
東京消防庁公式チャンネル 日常生活事故「屋内編」
東京消防庁公式チャンネル 日常生活事故「屋外編」
東京消防庁公式チャンネル 日常生活事故「乳幼児編」

3件のコメント

  • 現実と少しニュアンスが違うように感じます。排泄や それによる夜具の汚れ自体はそれほど問題ではありません。予備と交換してしまえば済むこと。問題なのは進行し続ける認知です。深夜になると、まるで何かにとりつかれたかのように始まる徘徊と糞便の弄び(恥という認識があるのか隠す)です。タンスの中に便を隠すとか、洗面所に流す。或いは窓から外に投げ捨てる・・・です。掃除機云々は余程家族からの協力も得られず運営側からも、さも当然のような態度をされ続け精神的に限界に達したんでしょう。このような件はどこかの記事を拾い集め文章を書くのではなく、実際に体験したことを書き続けない限り介護士やヘルパーの理解は得られません。

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    • 真摯なご意見、ありがとうございます。

      ニュアンスが違うのは仕方ないかも。
      文章力が稚拙で、申し訳ございません。

      僕の経験では、まず、ご家族は排泄で挫折します。交換すれば良いとは思いません。ご容赦。
      認知症の件ですが、知佳さんの例えは、認知症による問題行動ですね。介護現場の現実は認知症が全てではありません。症状が悪化する前に支援がなかったなら、そこにも、問題ありますね。
      ご苦労は良くわかりますよ。

      掃除機の記事ですが、逮捕された職員が無罪を主張してるので、冤罪の可能性もあります。

      記事の寄せ集めですが、僕は介護施設の管理者です。研修資料作成時、ネットで生の情報が集まらず、こういうのあったら良いなと、軽い気持ちでブログを始めました。介護と雑談なので。
      ストックもいっぱいあって。
      お気に障ったら、ごめんなさい🙏

      記事を最後まで読んで頂き感謝です。
      参考になりました。

      もっと良い意見を書けるよう、努力しますね。
      知佳さんも頑張って下さい。

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      • 知佳さんへ
        ちょっと冷たい返信だった気がして

        僕の失敗談です
        施設スタッフの頃、ある入居者が、他の部屋に入り、そこで排便して、部屋中に便を塗ったことがありました
        女性スタッフが発見して、僕に報告
        掃除の指示を出したら、そのスタッフ、泣いちゃったんですよね
        結局、僕が全部掃除しました

        そんな感じで、数十年過ごしてきました
        偉そうに聞こえたら、ごめんなさい

        いいね

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